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「けどよぅ、どうせ男として生きられねぇなら、せめて娘として生きられるようにくれぇしてやったほうが、お嬢さんのためじゃねぇか？」

「そ、それは……」

　考えもしなかった提案なのだろう。
　政吉は、言葉を詰まらせた。
　しばし考え、小さく頷く。

「確かに。そういう手もありますね。それはお嬢様のお気持ちを聞かねば決断は出来ませぬが。でもお店が……」

　奉公人というのは、それほど己の店が大事なのか。
　自分の家族でもない店のことを、やたらと気に掛ける。

　まぁ勤め先がなくなったら大変だろうが、でも主が変わるだけで、奉公人には何ら影響はないのではないか。
　その辺のところは、ちゃんとした奉公勤めをしたことのない貫七にはわからない。

「店なら、娘さんが旦那を貰えばいい。そうだ、それで一件落着だ」

　ぱん、と手を打つ貫七に、政吉も、おお、と明るい顔をした。
　だが、すぐにその顔が曇る。

「駄目です。言ったでしょう。お嬢様は、男が嫌いだって」

　それ以前に、そもそもこの意見は、本人の心を完全に無視した意見なのだ。
　一番丸く収まるのは間違いないが。
　だが貫七は、がしっと政吉の肩を掴んだ。

「何言ってんでぃ。男嫌いだろうが何だろうが、それが一番いい方法だ。何、婿を貰うってのも、名目だけでいいんだ。嫌なら相手にしなきゃいい。それよりも」

　無責任なことを言い、ぐいっと顔を近づける。

「とりあえずは、その祈祷師ってのに会ってみるのが先決じゃねぇか」