「つまり、男として生きられねぇってんなら、もう女になっちまえばいいってこった」

 軽く言う貫七の肩の上で、おりんもうんうんと頷いている。
 さっき言いたかったのは、このことだったようだ。

「そ、そんな。そんなこと、あまりにお嬢様がお可哀想ではありませんか。それに、それこそあの女の思う壺です。結局お店は、あの女の子供に取られるってことじゃないですか」

「でも結局、このままだとしたって、店はどうにもならねぇじゃねぇかい。娘さんが物笑い覚悟で男だって名乗りを上げにゃ、誰が店を継ぐんだよ」

「だから悩んでるんです。お嬢様をみすみす世間の笑い者にするわけにはいかない。お嬢様だけの問題じゃありません。そんな者が店を継ぐということ自体が、店の評判を落とすことにもなるのです」

「どっちにしろ、娘さんが店を継ぐことは出来ねぇってこった」

 ぐ、と政吉が黙る。

「そうだ。そんで、女の産んだ子供と結婚すりゃいい。男なんだろ? だったらちゃあんと、正妻の子である娘さんが店継げるぜ」

『それはいくら何でも無理だろ。父親が同じなんだから』

 思わずおりんが声を上げる。
 考えに沈んでいた政吉は、しばらくしてから、え? と顔を上げた。

「いくら何でも、父親が同じだったら駄目か。歳も離れすぎだわなぁ」

 政吉が口を開く前に、貫七は言葉を続ける。
 まるでぶつぶつと、先程から一人で言ってます、という態度だ。
 政吉はそのまま、何も言わなかった。