何やらきな臭い話になってきた。
 よくある話といえばそうだが、そんなどろどろに関わりたくない。

「そいつぁ気の毒なこったな。けど子を身籠っただけじゃ、店を乗っ取るなんて出来ねぇだろ? 本家にゃ、ちゃあんと、跡取りがいるんだし」

「ちゃんとした跡取りでないから困ってるんです。そこに付け込まれてるんですよ」

 ああ、と貫七は納得した。
 あのナリでは、確かに『ちゃんとした跡取り』ではない。

「店の者も、若様を本気で娘だと思ってると言ったでしょう。当然お客だってそうです。今更実は息子でしたなんて、単なる物笑いの種ですよ。それで困ってるんです」

「なるほどなぁ。でも何でそれで、家を出る必要がある」

「旦那様の囲い者が、怪しいからです」

「と言っても、懐妊中だろ。本人だって、そう自由にゃ動けねぇんじゃ……。それに、懐妊しただけで、何でいきなり本家乗っ取りなんて出来るんだ? そいつが男子を産んだわけでもあるまい」

 妊娠中なだけで、産んでみないと男か女かわからないはずだ。
 男も産まないうちから、そんなこと主張出来るものでもない。

「それが、おかしいのです。その女子、絶対に腹の子は男だって言い張るんです。何でもわざわざ有名な祈祷師に頼んで、腹に術をかけて貰ったとか。その術者にかかれば、例えすでに腹に女子がいても、男に変えることが可能だとか」