「でもよ、男だったら、そのうち嫌になるだろ? いくら両親が女子の格好をさせようとしてもさ」

「そうですね、普通はそうでしょう。そこが若様のおかしなところで」

「嫌がるでもなく、ずっとあの状態だってか?」

 顔をしかめて言う貫七に、政吉は、こっくりと頷く。
 理解に苦しむ。

「そういう奴も、稀にいる……とは聞いたことはあるが」

 戸惑い気味に、顎を撫でつつ言う貫七だが、確かにそういう話は昔聞いたことがある。
 確かどこかの岡場所だった。

 そういやあいつも、身体のわりにゃ男のような女子だったなぁ、などと関係ないことをしみじみ思っていると、いきなり鋭い視線を感じた。
 顔を上げると、店の角から顔を半分だけ出したおりんが睨んでいる。

「おっ何でぇ、おりん。盗み聞きか」

 屈んで手を出すと、おりんは一度、ばし、と貫七の手の平を肉球で叩いた。
 一瞬爪が、貫七の手の平に突き刺さる。

「いてっ。怒るなよ。そのうちお前にも味わえるようにしてやるからよ」

 言いつつ、おりんを抱き上げる。
 もう一度、おりんはぎろ、と貫七を睨み、次いで政吉に視線を移した。

 政吉は、まじまじとおりんを見た。
 どう見ても、特におかしいところはない、普通の黒猫だ。