「な、何故そのようなことを……」

 娘の身体のことを言われ、男は明らかに狼狽えた。
 貫七は目を細め、壁にもたれかかる。

「あんたの態度を見てりゃ、おおよその見当はつくさ。やたらと娘さんに、俺たちが近づかないようにしてるしな」

「それは……。当然ではありませぬか。お嬢様に、見知らぬ者を近づけるわけにはいきませぬ」

「その見知らぬ者に、ご厄介になってる身でよく言うぜ」

 ぐ、と男が口を噤む。

「俺の相棒の情報じゃ、あのお嬢さん……。ほんとにお嬢さんかい?」

 はっと、男が貫七を見た。
 わなわなと、身体が震えだす。

「良ければ、話してみねぇかい? どっちにしろ、ずっとこのままここに引っ込んでるわけにもいくめぇ」

 落ち着かせるように、貫七は、ぽん、と男の肩を叩く。

「あなたの相棒というのは……」

「ああ、あの黒猫さ。あいつぁちょいと普通じゃねぇんでね」

「猫?」

 訝しげな顔を向ける男に、貫七は、ふふ、と意味ありげに笑った。
 男は少し迷う素振りを見せたが、確かにどうにもならない悩みを抱えていたのだろう、項垂れると、大きく息を吐いた。

「あなたの仰る通り、私はどうしていいのか。このままここにいたところで、事態がどう好転するわけでもないことに、困り果てておりました」

 一気に言ってから、男は深々と頭を下げた。