---こんな風に、触れ合えるだけでも幸せだと思いやがれってんだ---

 ふん、と鼻を鳴らすと、おりんはおもむろに、娘の布団に潜り込んだ。
 娘の身体に触れないよう注意しながら、布団の中を移動する。

---う~ん、やっぱ外から見ただけじゃ、わからねぇわな---

 とはいえ猫の手では、着物を脱がすことはおろか、帯を解くことも出来ない。
 おりんは布団の中で、娘の膝の横辺りまで移動すると、よいしょ、と娘の足に取り付いた。
 そのまま遠慮なく、身体の上を顔のほうへ移動する。

---ん?---

 娘の腰の辺りまで来たとき、違和感を感じた。
 立ち止まり、考える。

---……えっ……---

 一つの思いに行き当たり、おりんが振り返ったとき、いきなり布団がめくられた。
 同時におりんが乗っていた娘の上体が起こされ、危うくおりんは転がりそうになる。

「どうされました?」

 横の男が、跳ね起きる。
 どうやらさすがに、身体の上を動く感触に、娘が目を覚ましたらしい。
 驚いた顔で、娘がおりんを見つめている。

「にゃあぁん」

 おりんは思い切り甘えたような声で、すりすりと娘に身体を擦り付けた。
 何と言っても、おりんは猫である。
 夜に娘の布団に入り込んでも、騒ぎにはならない。

「ね、猫? ……ああ、びっくりした」

 案の定、娘はほっとしたように、おりんを抱き上げた。