「何言ってんだよ。こんな色男、他にいねぇだろ?」

 ずい、とお紺の目の前に顔を突き出す。
 以前はそれだけでどきどきしたが、お紺は無慈悲にその顔を押し戻した。

「何か変わったわね。以前のほうが、もっと格好良かったわ」

 つん、と背を向ける。
 貫七が、あれ、と呟いて己の顎を撫でた。
 ちらりとまたお紺が目を戻すと、そんな貫七を、女子が見つつ片手を口に当てて、ぷぷぷ、と笑っている。

---あれ……---

 あの笑い方。
 そういえば、おりんもよくああやって笑っていた。
 もっとも猫なので、前足を口に当ててはいたが、本当に笑っていたのかはわからないが。

---でも、まさかね---

 おりんが化け猫だなどと、確かに聞いたが本気にしているわけではない。

「それで? 何しに来たの」

 何故か以前のようなときめきは感じないが、それでも帰ってきたと思ったら女連れというのが癪に障り、お紺はじろりと貫七を見た。

「つれないねぇ。いやね、ようやっと山から下りて来たはいいものの、そろそろ世間は冬じゃねぇか。この寒空の下、延々空き長屋を探して回るのもしんどいし。ここはお紺ちゃんに甘えさせて貰おうと思って、わざわざ宿場を通り過ぎて来たんだぜ」