「なっ何言ってんでぃっ! 戻らないほうが良かったなんて、思うわけねぇだろ!!」

 だん! と片膝を立て、拳を握りしめて喚く。
 その剣幕に、ちょっと気圧されたおりんだが、すぐにしゅん、と下を向いた。

「だって、猫だったときのほうが、貫七、普通に接してくれた」

「う……そ、それは……」

「おいらが女だからでしょ」

「そ、それは……。そうだけど、でも嫌なんじゃねぇ!」

 やけくそ気味に叫ぶと、貫七は、ぐい、とおりんの肩を掴んだ。
 手に触れるのは、確かに人の身体だ。
 それに、貫七の焦っていた気持ちが溶けていく。

 戻ったんだ、ということを改めて感じ、貫七は初めて、まじまじとおりんを間近で見た。

「おりん……。本当に、戻ったんだな……」

 思えば戻った直後から、思いもしなかったことで頭がいっぱいで、猫から人に戻ったという最も喜ぶべきことが吹っ飛んでいた。

「本当におりんか? 確かに昔の面影はあるけど。何か……男だと思ってたし……」

「りんだよ。ほら、これ。山犬に噛まれた痕。貫七は、もうないの?」

 やっと少し笑って、おりんが首筋を示した。
 よく見ると、無数の傷がついている。

「俺も足にあるよ。……ごめんな、おりん」

「何で貫七が謝るのさ。貫七だって危なかったじゃん」