「これおりん。飯じゃぞ」

 太郎坊がおりんを起こそうとするのを、貫七は慌てて止めた。

「い、いや。おりんはこのまま寝かしておこうぜ。か、可哀想じゃねぇか」

「……飯を食ってから、また寝ればいいではないか」

「いやっ! ここで、このまま寝かしておく」

 起きてしまったら、次は普通に夜具に横になってしまうのではないか。
 折角の膝枕が! と断固拒否する貫七を、太郎坊は若干冷めた目で見た。

「わしはたまに、お前たちの様子を、式を通して見ておったが。お主、さんざっぱら女子を誑かしておったではないか。今更膝枕で喜ぶタマでもあるまい」

「ななな、そ、そんなんじゃねぇよ!」

 真っ赤になって怒鳴る貫七に、少し膝のおりんが、ぴく、と動いた。
 が、動揺しまくりの貫七は気付かない。

「そ、そうじゃなくて。お、俺はおりんがヒトに戻ったことが嬉しいんであって……」

「それはそうじゃろうな。ヒトに戻れば、お前の想いも遂げられるというもの」

「だ、だからっ!!」

 赤い顔のまま否定しようとする貫七を、面白そうに見ていた太郎坊だが、ちらりとおりんを見、ふと真剣な顔になった。

「お主も気付いておろう。おりんはお主にとって、かけがえのない存在じゃ。それがただの友情でないのは、今のお前の動揺の仕方が物語っておる。お主、おりんが戻る前から、何となく己の心に気付いておったのではないか?」