「え~? 何だよ、もぅ~。だってあんた、まともにおりんちゃん見ないしさぁ。さっきあんたがあからさまに視線を逸らすもんだから、おりんちゃん、超悲しそうな顔になっちゃったんだよ~?」

 うぐ、と言葉を詰まらせ、しおしおと項垂れる。
 そんな貫七を、目を細めてしばし眺めた小薄は、少し可哀想になったのか、質問を変えることにした。

「貫七や。おりんが女子だったこと、まぁ驚いたであろうが、全く気付かなかったか?」

「ええ、全く……」

 情けないことこの上ない。
 十年以上も一緒にいて、そんなこと疑ったこともなかった。
 これで女っ誑しと言えるだろうか。

 だが仕方ない部分もあるのだ。
 何といっても、おりんは五、六歳のときに猫になったのだから。
 身体だって声だって、まだ男も女も変わらない。

「そんなもんか。おりん自身も、最近まで自分が女子だと気付かなかったようじゃし」

 ふむ、と頷き、小薄は俯く二人を見る。

「で、実際身体に戻ってみて、どうよ。女子のおりんは気持ち悪いか?」

「気持ち悪くなんかねぇよ!」

 反射的に叫び、ついでに片膝も立てた貫七に、埃立つじゃん、と言いながら、木の葉がそそくさと重箱を遠ざけた。
 貫七の剣幕にちょっと驚いた小薄だが、すぐににこりと微笑む。

「ということじゃ。良かったの、おりん」

 にこにこと笑いつつ、ばりばりとおかきを頬張る。
 何ともやる気があるんだかないんだか。
 ちなみにお土産のはずのおかきは、もっぱら小薄と木の葉の胃に収まっているような。