「お~、確かにここは、密かな術を用いるには格好の場所じゃな。なかなか神気が満ちておる」

 とことこと歩いて行きながら、小薄は、ちょい、ちょい、と扇の先で灯した狐火を弄んだ。

「さてさて。お主はどうなっておるかな。楽しみじゃな」

 るんるんと軽やかに奥に進んでいくと、前方に青白い光が見えた。
 ぴちゃん、と水の落ちる音もする。
 小薄に抱かれたおりんが、ごくりと喉を鳴らした。

「ふむ。どうやらあそこらしいな」

 おりんの身体が沈んでいるという洞窟内の池は、ヒカリゴケで存在を主張していた。

「何か、あれほどお主を想っておる貫七を差し置いて、先に復活したおりんに会うのは申し訳がないような気もするのぅ」

『あ、あのぅ……。ほんとに、貫七は大丈夫でしょうか……』

 おずおずと言うおりんに、小薄は、ん? と目を落とした。

「それは、戻ったお主に対することか? それとも、今現在の貫七の具合のことか?」

『……どっちも……』

「何がそんなに心配なのじゃ? おそらく貫七も、お主のことは感じておろう。気付いてないだけで、戻ったお主を見れば、なるほど、と納得するはずじゃ」

 しかし、と小薄は、池の水際に立って、中を覗き込んだ。

「あれほど色事に長けた貫七が、何故気付かないのじゃ。そこが不思議よな」