「それにしても太郎坊殿は、やけにお弟子殿を大事になさるのじゃな。愛宕山の太郎坊ともなれば、わざわざ人の弟子を取らずとも、烏天狗や木端天狗などがいくらでも仕えように」

 太郎坊というのは、この愛宕山では最高位の天狗なのだ。
 天狗は人に関わることが多いとはいえ、好きこのんで関わり合いになりにいったりしない。

 何といっても人の持つ気というのは汚いからだ。
 自然の気を操る天狗が好むような、綺麗な気を纏う人間など、そういない。

「たまたまじゃ。わしの祠の傍に、貫七とおりんは捨てられておった。人であっても子供の気は綺麗なもんじゃ。気紛れに育ててみたが、なかなか面白いものじゃった。意外にこ奴ら、それなりに大きくなっても、さして汚くならぬしの。お互いがお互いを想いやる気が、妙に心地よかったんじゃ」

「ほ~、そうか。天狗は恋など無縁じゃものな」

「恋?」

「そう。まぁ強いて言えば、お主が貫七やおりんに感じた感情というのかの。愛情ってやつじゃ。それの強い版が、貫七の中に流れている」

「??」

「つまり、貫七がおりんに抱いている気持ちじゃな。純におりんを想う気持ちは、綺麗なもんじゃ。わしも、それに惹かれた」

 ふふふ、と笑い、小薄は腕に抱いたおりんを撫でた。
 おりんが、不安そうに小薄を見上げる。