その洞窟の前まで来て、小薄は顔をしかめた。

「うむむ……。仕方ないことじゃが、太郎坊殿。お主の妖気がきつ過ぎるわい」

「ああ、そうかもしれぬ。結界を張っているのは池の表面じゃが、あまり血の臭いを振りまくと危ういのでの、強化したんじゃ」

「この奥じゃな? ではこれ以降は、わしの結界に変えさせて貰うぞ。お主は外で待っておれ」

 太郎坊からおりんを受け取り、言う小薄に、ちょっと太郎坊は渋った。

「確かに身体を保つ結界は、もう必要ないじゃろうが。結界を解いた途端に、おりんの病が急激に進行するやも……」

「これこれ太郎坊殿。これ以上わしを困らせないでおくれ。腹が捩れそうじゃ」

 くくくく、と必死で笑いを堪えながら言う小薄に、太郎坊が厳しい目を向ける。

「小薄殿。わざわざ我が弟子のために、遠いところを出張ってきてくれたのは感謝しまする。でも、あまりに礼を失する態度ではござらんか」

「ああ……確かに。すまぬ」

 ぺこりと素直に、小薄は頭を下げた。
 が、相変わらずその口角は上がっている。