「小薄殿が、直々に……?」

「さよう」

 ほぅれ、と後ろを向き、小薄は、ふゎっさ~っと尻尾を振って見せた。
 天狐の象徴、四つの尾。

「それにしても、太郎坊殿もなかなか粋な計らいをしたものよな。猫に魂を封じたのは、何か思惑あってのことかの?」

「いや、たまたま。あ、そうじゃ! そのおりんの身体が大変なんじゃ!」

 はた、と顔を上げ、太郎坊が小薄に詰め寄る。

「わざわざ小薄殿が出張ってきたのは、やはりおりんが危ないからか。天狐であれば、おりんの出血を止めることも可能なのか?」

 必死で言う太郎坊に、小薄はちょっと妙な視線を寄越した。
 その横で、木の葉が懐からおりんを出して見せる。

「おりんは何ともないよ~? とりあえずさぁ、お家に入ってもいい? 太郎坊様、お土産に伏見のおかきを持ってきたんで、お茶淹れてもいいですかぁ?」

 呑気に言いながら、雲が突っ込んだことで出来た大穴から、木の葉がさっさと家に入り、いそいそと囲炉裏に火を熾して鉄瓶をかける。
 そして家の中に転がっている貫七の様子を見た。

「顔色悪いなぁ。乗り物酔いだな。別に怪我もしてないし、雲から降りたし、そのうち起きるでしょ」