内容はともかく、何とものほほんとした空気だ。
 おかきを食べつつ物見遊山気分のお狐様二匹が楽しそうに笑っている間に、愛宕山が見えてきた。

「おおおお、さすがに近づいてきただけに、速さも尋常でないわい」

 文の気を辿って来ているので、太郎坊の近くになるほど速度も上がる。
 一気に愛宕山に飛び込むと、雲は物凄い速さで山の一角、妖気の強くなっているところを目指した。

「……木の葉よ」

「あい」

「太郎坊に阻まれることを嫌って、太郎坊自身の気を使ってきたわけだが。この勢いでは、このまま太郎坊に突っ込みそうだな」

「そうですねぇ。最早おいらでは止められませんねぇ」

「わしでも止めるのなら、そろそろ停止装置をかけねばならんが」

「でも変に手前で止めたら、太郎坊に阻まれるかもですよ。へいこら頭を下げるのは嫌ですよ」

「わしもじゃ。この勢いで突っ込めば、いかな太郎坊とて阻みきれんじゃろ」

「じゃ、このまま行きましょう~」

 いそいそと、木の葉はおりんを懐に入れた。

「貫七はどうしましょう?」

「雲の切れ端で包んでおけば、まぁ死にはせんじゃろ」

 呑気に言葉を交わしているうちにも、雲はどんどん、とある一角に近付いて行く。
 そして、少し拓けたところに出た、と思った途端、目に入ってきたのは、粗末なあばら家。
 その前に、一人の老人が、杖を構えて立っていた。