「ところで小薄様~。やけに快調に進んでますが、貫七たちの案内もなく、よく迷いもなくぐんぐん進みますねぇ~」

 雲の上で、ぼりぼりとおかきを頬張りながら、木の葉が言う。

「ふふん。わしの機転を褒めるがいい。というか、貫七は眩暈と酔いで、半死半生ではないか」

 同じくぼりぼりとおかきを齧りつつ、小薄が、ちょい、と扇ですぐ傍に転がる貫七を指す。
 おりんは気を失っているが、貫七は低く呻きながら丸まっている。

 意識はあるのだが、如何せん頭も上げられない。
 これではとても案内など出来ない。

「そもそもこ奴ら、道などわかっておらぬだろ。端から案内など、期待しとらんよ」

「んじゃあ、どうやって太郎坊様のところに行くつもりなんで?」

 ぐんぐん進む雲を不思議に思いつつ木の葉が聞くと、小薄は雲の前方を、ちょいちょいと指した。

「文じゃ。貫七が持ってきた、太郎坊の文。あれには太郎坊の妖気がたっぷり染み込んでおる故、元の気を辿ることなどわけはない。太郎坊も早く文を飛ばすために、強い気を発したようじゃし、いや速い速い」

 ぺし、と扇で側頭部を叩きながら、軽く笑う。

「なるほど~、さすが小薄様。己の力はさほど使わず、他人の力を利用する辺りが姑息です~」

「はっはっは。何といっても我らは狐じゃからの」