「しょうがないなぁ」

 そう言うや、重箱を雲の上に置いた木の葉は、貫七の腕を掴んだ。
 そのまま背負い投げの要領で、貫七を投げ飛ばす。
 ぼす、とほとんど一回転して、貫七は雲の上に背中から落ちた。

「こらっ木の葉! 乱暴にするでない。わしが落ちるであろうが」

 貫七が飛び込んだ衝撃で、逆に雲から飛び出しそうになった小薄が叱りつける。

『か、貫七~。大丈夫?』

 とん、と貫七の胸に飛び降りたおりんを見、木の葉が再び笹の葉を突き出す。

「はい、おりんちゃんもねんねだよ~」

 くるくるくるっと目の前で回る葉をちょっと見ただけで、おりんはばたん、と貫七の胸の上にひっくり返った。
 ありゃ、と木の葉が少し驚いたように、おりんを覗き込む。

「やっぱり人と同じじゃないのかな。本体も小さいんだろうか」

「小さくはないじゃろ。でもまぁ通常の状態でないのは確かじゃから、術の効きもいいんじゃろな。……それにしても」

 ふふふふふ、と小薄が扇を口元に当てて笑う。

「さてはて、どうなることやら」

「全くです~」

 楽しそうに笑うお狐様が操る雲は、貫七たちを乗せて、あっという間に空の彼方に消え去った。