「ふふ、まぁそれも、あんた次第だよね」

 相変わらず目を細めて笑い、木の葉は持っていたおかきを、どこからか出した美麗な重箱にがらがらと入れた。
 風呂敷に包み、残りのおかきは他の狐たちに分ける。

「さて、じゃあ行きますか。しょうがないから、お茶は太郎坊様のところで頂きましょう」

 よっこらしょ、と重箱を抱え、木の葉が障子を開ける。
 おりんを抱いたまま、小薄も回廊に出、空を見上げると、くるくると扇を振った。
 木の葉は傍に生えている笹から、葉っぱを取って貫七に向き直った。

「はい、あんたは眠くな~る~、眠くな~る~」

 言いつつ、貫七の目の前で、手に持った笹をくるくると回す。
 嘘くさい呪文らしく、生憎眠くはならないが、眩暈が起こり、貫七の身体がぐらりと傾いだ。

「おおっと。小薄様、早くしてくださいよ。こいつの身体、でかいから、おいらじゃ支えられません」

「うむむ。人の重さというのがいかほどのものか、忘れてしもうたわ。あれぐらいでいいかの」

 ぶちぶちと言いながら、小薄は少し離れたところに浮かんでいる雲を見つめた。
 そして、ちょいと扇を振る。

 途端にびゅおっと突風が吹き、ざっと辺りを乱したかと思うと、次の瞬間には、小薄の足元に白い雲が、ふわふわと浮かんでいた。

「よし。乗れ」

 ひょい、と小薄が飛び乗り、木の葉が貫七の手を引いて、雲に促す。
 が、貫七はきつい眩暈のお蔭で、足元が定まらない。