「何故おりんを、そこまで大切に想う? 家族といえども、己の命を引き換えになど、そうそう出来るものではないぞ? 親子でもあるまいに。お主の心は、何故そこまでおりんに占められておるのだ。まるで恋に狂った清姫のようじゃ」

「なっ何で俺が清姫……」

 思わぬ指摘に、貫七が動揺する。

「お主のその気持ち、恋しい者を想うようにしか見えぬ。……自覚があるのではないか?」

 目を細めて言う小薄に、貫七はたじたじとなる。
 前にもちらっと思ったが、貫七の、おりんを想う気持ちは他ではない気持ちなのだ。

 今までは、それでも気にならなかった。
 おりんを一番大切に思うのは、ずっと一緒に育った家族だからであり、助けられなかったという後悔があるから、当たり前だと思っていたのだ。

 だが今朝、宿の女将に指摘されて、ちょっと気付いたのだ。
 まるで恋である。
 恋心というものは知らなかったが、初めての感情ということは、これがそうではないのか。