「さぁ! 何にしろ太郎坊は何もわからず焦っているのじゃろ。とっとと行って、安心させてやるのも、弟子の役目じゃ」

「お、おぅっ!」

 何が何だかわからないが、行者の元に帰るのは大賛成だ。
 貫七も腰を浮かせた。

 と、小薄がきょろ、と周りを見回した。

「ん? 木の葉~。木の葉はどこじゃ?」

 あれ、とおりんも周りを見た。
 そういえば、政吉たちと別れてから、木の葉のことも見ていない。
 置いてきてしまったのかとも思ったが、別に木の葉は案内がなくても帰ってこられるはずだ。

「あれれ? 誘導してくれたのは、木の葉様じゃなかったのか?」

 貫七もきょろきょろしながら木の葉を探す。
 しばらく待っていると、すらりと一枚の障子が開いて、木の葉が入ってきた。

「もぅ、あんたらがさっさと行っちゃうからさぁ、あの人たち帰すの、大変だったんだよ~? まぁ希望通り、おかき買って貰ったけどさぁ~」

 口調は不満そうなものの、その手には大きな紙袋が抱えられている。
 香ばしい匂いに、その場の狐たちが、ひくひくと鼻を蠢かせた。

「小薄様~。焼き立てですよ~。お茶淹れましょうか」

「おお、良いな」

 へにゃ、と破願して座ろうとする小薄に、貫七は駆け寄った。
 がし、と腕を持ち、腰を落とすのを許さない。