「おりん。お主は気付いておるのか?」

 こそ、と小声で言う。
 顔の前におりんを掲げているので、小声であれば貫七には会話しているのもわからない。
 おりんは曖昧に首を傾げた。

『た、多分。で、でもおいらも、詳しくは知らないんで……』

 何せ猫ですから、と困ったように言うおりんに、小薄は、ぶは、と吹き出した。

「そうか。そうじゃの。お主は本来、いくつなのじゃ?」

『えっと……。貫七が十九? か、そんなもんだから、十七ぐらい』

「ん? そうであれば遅いな。そうか、人の身体は仮死状態か。成長も、緩やかになっているのかもしれんな」

『そ、そうなんですか?』

「そらぁ……。普通に生きているよりも、養分の取り込みはままならん。人が成長するには莫大な養分が必要じゃろ。仮死状態なら、そんな養分採ることは出来ん。また、そんなに必要ないかもしれんしな」

 うん、と頷き、小薄はおりんを降ろした。

「でも、ということは、お主の身体は順調だ、ということかの」

『そ、そういうことになるんですかねぇ』

 恥ずかしそうに前足で顎の下を掻くおりんは、ふと貫七が必死の形相で乗り出しているのに気付いた。
 おりんはバツが悪そうに目を逸らす。
 あれれ、と小薄は、そんな貫七とおりんを見比べた。