どさ、と身体を打ち付け、貫七は呻いた。
 相当高いところから落ちた感じなのに、打ち身の痛みだけで、身体に異常はなさそうだ。
 そろそろと顔を上げると、見たことのある板張りの床。

「よぅ参ったの。早かったな」

 かけられた声に振り向くと、小薄が脇息に寄りかかって笑っている。
 やはり、ここは小薄のお堂。
 そういえば、一番初めも落ちてきたような。

「お、小薄様……。ここに来るにゃ、絶対落ちねぇといけないんで?」

 不満そうに言う貫七に、小薄は片眉を上げた。

「そういうわけでもないが。別空間に入るわけじゃから、普通とは感覚が違うじゃろうね。そもそもお主らも、毎回一ノ峰にまで来てられんじゃろ? わざわざ距離を飛び越えさせているのだから、変な空間から出てくることにもなろう」

 そこで初めて、貫七は自分たちがいるのは普通の空間ではないことを知った。
 言われてみれば、確かにこのように多くの狐が普通の空間にいれば、人などおいそれと参拝出来ないだろう。

「さてさて。太郎坊より、返事は来たか?」

 のんびりと言った小薄に、は、と貫七が腕の中のおりんに目を落とした。

「そうだ、一大事だ! おりん! 大丈夫かっ?」

 片手でおりんを抱き、もう片方の手でわしゃわしゃとおりんの身体を撫で回す。
 おりんは慌てて暴れまくった。