大した日数は経っていないが、その間、どこか妙だと思うことは多々あった。
 一言で言うと、連れが娘に構い過ぎる、というのか。

 駆け落ちでもしてきたのなら、それもわかるような気がするが、そのわりに連れの態度はやけに固い。
 心を許したような気安さが感じられないのだ。

 そのくせ、お紺や貫七から、やたらと娘を遠ざけるというか。
 必ず連れが娘との間にいる感じなのだ。

「貫七さんから守ろうとするのは、わかるんだけどねぇ」

 膝の上のおりんを撫でながら、お紺が言う。
 おい、と突っ込みながらも、貫七は特に怒るでもなく顎を撫でた。

「娘に何かあんのかな」

 見たとこ、そうおかしなところはないようだった。
 ただ慣れぬ長旅に、身体が参っただけと思っていたが、そういえば医者は頑として受け付けない。
 もっともこの近くには、そうそう医者などいないのだが。

「普通は全然回復しなかったら、医者を手配するもんじゃねぇのかな。連れが娘の下男だとしたら、なおさらだ」

「そうだよね。あたしも何度か、医者を呼びましょうかって言ったんだよ。でもあの男、そんときはやたら必死になってさ」

 あり得ない勢いで拒否したのだという。