「あ、じゃあ俺たちもここで。良かったな、おいのちゃん。頑張れよ」

 先に進みながら言った貫七に、政吉が驚いた顔を向ける。

「え、ここでお別れなのですか?」

「ああ。あんたらはちゃんと帰る場所があるだろ。俺は別にねぇもん。あんたらを術者のところに連れて行くってのが目的だからな」

「それはそうですが……」

「じゃあな。世話になったな」

 いきなりな別れに戸惑う二人に、強引に手を振り、貫七は小走りに千本鳥居を先へ進んでいった。
 少し緩やかな曲がり角を曲がったところで、ぐっと闇が深くなった。

「うわっ」

 思わず叫んで貫七が足を止める。
 肩の上で、おりんが吹っ飛びそうになるのを、爪を立てて耐える。

 いきなりの何も見えないぐらいの闇に、貫七は後ろを振り返った。
 が、すでにそこも闇だ。
 先程まで一緒にいた政吉たちも見えない。

 と、少し先に、ぽ、と灯りが点った。
 ゆらゆらと揺れる灯りは火の玉だ。

 闇にふらふら浮かぶ火の玉など、普通の人であれば度肝を抜かれるだろうが、貫七はほっとした。
 あれは狐火だ。

 だが迷わずそちらに進んで狐火のすぐ前に着いた途端。

「ぎゃーーーっ!!」

『にゃあーーーっ!!』

 足元がなくなったのだ。
 周りが見えないので、何がどうなっているのかわからない。
 とにかくおりんを抱き締め、貫七は闇の中で重力に従った。