「そうだな。あ、でも木の葉様。大変なんだ。おりんが、血塗れだってんだよ」

 行者の文を思い出し、貫七が木の葉におりんの身体の状況を説明する。
 といっても貫七にも詳しいことはわからないので、血塗れ、としか言いようがないのだが。

「ち、血塗れ?」

 木の葉もさすがに驚いたようで、おりんをまじまじ見る。
 そのとき、やっと政吉たちが追いついた。

「あ、あれ。その方は……」

 政吉が、木の葉を見て怪訝な顔になる。
 あ、とおりんから素早く視線を切り、木の葉はずい、と一歩前に出た。

「おいらはこの稲荷山の巫子だよん。何やら強い気が降りたもんで、わざわざ出向いてきたわけ。あんたが困ってんの?」

 貫七は少し気に中(あ)てられて後ずさった。
 木の葉が、意図的に気を強くしているのだろう。
 常人でも、ちょっと普通でない気を感じるはずだ。

 そういえば、木の葉は白い単姿だ。
 普通でない雰囲気を出すためだろう。
 確かにこの山奥で、神気を発する白装束の子供に会えば、神の使いと見るかもしれない。

 事実、木の葉はれっきとした神の使いなのだが、さすがに本当の正体を曝すのは抵抗があるようだ。
 そう思わす程度に留める、といったところか。

「あっ……。て、手前は大坂・廻船問屋、桔梗屋の手代、政吉と申します。こちらは桔梗屋の若、伊之介様で」

 見た目は子供だが、政吉にも木の葉の気が伝わったのだろう。
 がばっと頭を下げ、名乗る。