どうするか、と苛々しながら鳥居の立ち並ぶ先を見た貫七は、ずぅっと先がやけに暗くなっているのに気付いた。

「ん? 日が陰ってる……わけじゃねぇよな」

 手を翳して見てみるが、明らかに先が見えないほどの闇だ。
 まだ朝である。
 天気もいい。

「何だ?」

 千本鳥居の中の先だけが、闇なのだ。
 ふと気付けば、周りには人っ子一人いない。
 唯一少し後ろに、政吉に手を引かれた伊之介がいるだけだ。

『木の葉様ー』

 肩の上のおりんが、闇に向かって叫んだ。

「おい、こりゃ木の葉様の仕業か?」

『だってそうとしか思えないもの。じゃなきゃ怖いし』

 ぼそぼそと言っていると、闇の中から一人の少年が、とことこと歩いて来た。

「迎えにきた途端に、そっちから呼んでくれるとはね~。君もおいらに会いたかったクチ?」

 貫七の前に立ち、木の葉がにかりと笑う。

「やっぱりその子、好きだなぁ~。欲しいなぁ~」

「駄目っ」

 おりんに顔を寄せる木の葉と被る勢いで、貫七が拒否する。
 ぶぅ、と頬を膨らませた木の葉だが、そう言われることは想定内だったようで、あっさり引き下がった。

「もぅ。あんた、この子のことになったら目の色変わるんだから。……まぁ、自分よりも大事なんだろうしねぇ。……ふふふ、早く戻してあげたいね」

 何故か面白そうに、にやにやと言う。
 何かを含んだような言い方が気になるが、木の葉の言う通りだ。
 貫七は、こくりと頷いた。