「ねぇ貫七さん。あのお人、ちょいと妙じゃないか」

 旅人二人連れを家に入れてから数日後。
 お紺が、こそっと貫七に耳打ちした。

「妙? 妙と言やぁ、初めっから妙だったぜ。あんな、いかにもいいとこのお嬢さんが、供一人で夜に出歩くなんざ」

「そうだよね。確かに」

「だから初めに俺が渋ったろうが。あいつらを入れたのぁ、お紺ちゃんだぜ」

「だって。放っとけないじゃないか。あんな、うちの前で」

「お紺ちゃんは、お人好しだなぁ。心配だぜ」

 俯くお紺に、ぐいっと顔を近づける。
 お紺は慌てて仰け反った。

「もぅ、からかわないでおくれよ。あたしだって、後悔してるんだから」

「て言っても、今更叩き出すわけにゃいかねぇ」

「そうだよ。だから困ってるんだ」

 しょぼん、とお紺は、また俯く。
 おりんが慰めるように、お紺の膝に乗って丸まった。

「……確かになぁ」

 呟き、貫七は窓辺に寄りかかって、ぼんやりと外を眺めた。