言われてみれば、貫七は自分から人を好いたことはない。
 女子と遊ぶのは好きだが、それは単に遊んでいるのであって、恋をしているわけではないのだ。
 相手はともかく。

 だから相手が本気になったら逃げ腰になってしまう。
 お紺のときも、結局どうしていいかわからず、逃げたようなもんだ。

---これが恋ってやつなのか?---

 己の胸に手を当て、ちらりと厨の隅で茶碗に顔を突っ込んでいるおりんを見る。

---いやいや。おりんは男だ。その前に猫じゃねぇか---

 成長したおりんを知らないので、どうしても猫の印象だ。
 そう思えば、猫だからこそ、人と違った感情が湧くのかも、と考える。

---うん、そうだよ。猫は人間よりも可愛いもんな。俺だって、衆道の気(け)はねぇ。おりんをこんなに想うのは、おりんが猫だからだよ。戻ればまた違うさ---

 戻った暁には、ちゃんと友達としての感情になるはず、と思い、貫七は無理やり自分を納得させた。