「……いやいやいや! おかしいって!」

『ぎゃーっ! 気持ち悪い!』

 叫ぶなり、貫七は回れ右して駆け出した。
 おりんも必死で貫七にしがみつく。

 が、弾丸の小鳥はまさに弾丸のような速さだ。
 逃げる貫七に、ぐんぐん追いつく。

 小鳥の嘴が貫七の後頭部に突き刺さる、という瞬間、貫七は、ぱっとしゃがむと同時に、履いていた下駄を片方脱いで突き上げた。
 丁度己の頭の位置に現れた下駄に、すっこーん、と軽い音を響かせて、小鳥が突き刺さる。

「……」

 しん、と静寂が訪れてから、そろそろと貫七は身を起こした。
 手に持っていた下駄を降ろして、ぞっとする。
 嘴を突き刺したままの小鳥は、紙を折ったものだが、がっつりと下駄に食い込んでいた。

「……あんの師匠はっ!」

 悪態をつき、小鳥を掴むと、ぐいっと引き抜く。
 これが貫七たちの師匠である行者の力だ。
 貫七の気を探って、そこに文を飛ばすことが出来る。

「蝶とか、もっと優雅なものにすりゃいいものを!」

 紙のくせに、木の下駄に突き刺さるほどの威力で飛んできたのだ。
 これを後頭部に食らったら、どうなることやら。

『急ぎの用事なのかもよ? 昼間の返事かな?』

 おりんが、小鳥型に折られた紙を開く貫七の手元を覗き込む。
 全く、とぶつぶつ言いながら紙に目を落とした貫七は、読むにつれて動きを止めた。
 顔から血の気が引いて行く。

「……お、おりんっ!」

 がばっと貫七が、肩に乗っていたおりんを掴んだ。

「お、お前、何ともねぇかっ!」