「でも女になって政吉に嫁ぐのは……別の抵抗があるよ。ずっと一緒だったこともあって、何か恥ずかしい」

 照れ照れ、と言う伊之介に、政吉は、少し顔を上げた。
 何か嬉しそうだ。

 伊之介も単に恥ずかしそうにしているだけで、拒否の姿勢は取っていない。
 政吉と一緒になることは、気持ち的には嫌ではないようだ。
 が。

「折角上手く行きそうなところなのに、残念ながら、女になるなんてことは無理だったってこと」

 そうでした、と政吉と伊之介が項垂れる。
 う~ん、としばし悩み、貫七は伊之介に目を向けた。

「で、初めの質問に戻るが。おいのちゃんは、店のことも、考えるってことだよな? 男に戻る努力をするってことは、店のことを考えてのことだろ?」

「うん。どっちにしろ、女になるなんて無理だったし。男に戻らないといけないのなら、当然店のことも考えるよ」

「そんじゃ、この旅の間、おいのちゃんは男に戻る練習をする、と。跡取りのことはとりあえず置いておいて、あとの一番の問題は、店の者の反応と、お客とかの反応か。それさえ何事もなければ、あとはおいのちゃんの努力次第で何とでもなるわけだな」

 元々伊之介が普通に育っていれば、妾に弟が産まれようと問題はないのだ。
 それぐらいなら、お狐様に頼めば、何とかなるのではないか。
 木の葉は人の心を操るのが得意そうだった。

「よし。じゃああとは、おいのちゃんの修行としよう。その決意を、明日稲荷山に行って固めようぜ。おいのちゃんがしっかりと、今後桔梗屋の跡取りとして立てるよう、願掛けするんだ。何といってもお稲荷さんは、商売繁盛の神様だからな」

 どうせ明日また、稲荷山に行かねばならない。
 木の葉や小薄が伊之介の前にまで姿を現すとは思えないが、伊之介の今後をお願いしようにも、本人の口から決意のほどを聞いたほうがいいだろう。

「そう……だね。うん、そうしよう」

 こくりと伊之介が頷き、明日に備えて休むことにした。
 貫七は、女将に弁当を頼むと言って、部屋を出、ついでに余っている旅装束も都合することにした。