確かにずばんと振られてみれば、物事が冷静に見える。
 というか、今気付いたが、貫七にははっきりと振られたというのに、その瞬間驚いただけで、特に何の痛みもない。

「そういえば、女になりたい、と思い詰めるまで貫七さんを想ってたはずなのに、何でこんなに悲しくないんだろう? 道成寺とかだったら、女子は振られたら、気も狂わんばかりに衝撃を受けるのに。何かやたらとすっきりしてるよ」

 ぞく、と貫七は寒気を感じた。
 道成寺の安珍のような目には遭いたくない。
 今後は身を慎むべきか、などと思っていると、膝の上でおりんが、ぷぷぷ、と笑った。

「だから、丁度いい時期に、俺が現れたってこった。おいのちゃんも、この先どうしようか迷ってただろ? このまま女でいたほうがいいんだろうが、普通に考えりゃそんなこたぁ無理だ。そんなときに、性別を変えられるって話を聞いた。そこに色男が現れた。結構一生懸命になってくれてる色男の姿に、切羽詰ってたのも重なって、ころっと転んだだけだよ」

 単に説明するためだけなんだか、しゃあしゃあと己のことを『色男』と言う。
 おりんは冷たい目で貫七を見上げたが、政吉と伊之介は、特に突っ込まなかった。

「冷静になってみりゃ、俺っちよりも政吉さんのほうが、よっぽど自分のことを想ってくれてるってわかるだろ?」

「それは……」

 伊之介が下を向く。
 政吉も真っ赤になって下を向いているし、何だか妙な空気だ。

 皆男なんだぞー、と叫びたいのをぐっと堪え、おりんはきょろきょろと三人を見回した。
 会話に加われないのはもどかしい。