「お嬢さんがこのままで、妾の子供が跡取りになるのが、一番いいのかもしれねぇな」

「私もね、もうそれでもいいかな、と思うんだよ。でも、女がね。父上も、子供だけを引き取ってくれればいいのに、女がくっついてきそうなんだもん。あの女さえいなければ、私は母上と引っ込んで暮らしてもいいんだ」

 やはり妾が正妻の座を狙っているのだ。
 木の葉も欲の塊だと言っていた。
 そんな女が大店を手に入れれば、ろくなことにはならない。

「駄目ですよ、そんなこと。若様も、ちゃんと幸せになる権利はあるんです。そんな、人並みの生活も出来ないような境遇に、自らを置かなくてもいいんですよ。若様こそ、幸せになるべきです」

 政吉が、拳を握って身を乗り出した。
 旅は、政吉の提案だろう。
 旦那に相談し、お嬢さんを説得して、連れ出したのだと思う。

 何とかしてやりたいと思ったことと、気晴らしの意味もあったのではないか。
 ずっと母親の傍で女装してきた若様を、全然違うところへ連れて行ってやりたいと思ったのだろう。

「……お嬢さん。この旅で、ちょっとは息抜き出来たかい?」

 ふと、貫七が表情を和らげて言った。
 きょとんとしたお嬢さんが、貫七を見返す。