はっとしたように貫七を見、お嬢さんは一瞬考えるような表情を浮かべた後、きゅ、と唇を噛み締めた。
「……お嬢様にも、いろいろあったのですよ」
硬い表情のお嬢さんに代わり、政吉が口を開く。
「私がお店に奉公に上がったとき、若様はまだ三つでした。当然お声もまだ高いですし、女子の格好をしておりましたので、てっきりお嬢様と思っておりました。しばらくはそのまま、他の奉公人たちと同様、お嬢様として接しておりましたが、あるとき店の前に水を撒いている私の前に、いきなり若様が飛び出して、若様に水をぶっかけてしまいました。ただでさえ『お嬢様』はお身体が弱いとお聞きしておりましたので、慌ててお着物を脱がせて身体を拭こうとしたのですがね。まぁそれで知ったのです」
そしてその時に、旦那と奥方が駆けつけ、魔除けの意味合いで男児に女児の格好をさせていると聞いたのだ。
すでに三つなので、もういいかとも思うのだが、あまりに似合うのでそのままなのだ、と旦那は笑っていたという。
もうちょっと大きくなれば、自然と変わっていくだろう、と思っていたらしい。
「多分本来ですと、そうだったでしょう。ですが事件が起こったのです。そのとき奥方様は懐妊されておりまして、次の年明けにご出産なさいました。女の子でしたね。跡取りは産んでいるわけですし、奥方様は心置きなくお嬢様を可愛がりました。その子が、亡くなってしまったのです」
「……お嬢様にも、いろいろあったのですよ」
硬い表情のお嬢さんに代わり、政吉が口を開く。
「私がお店に奉公に上がったとき、若様はまだ三つでした。当然お声もまだ高いですし、女子の格好をしておりましたので、てっきりお嬢様と思っておりました。しばらくはそのまま、他の奉公人たちと同様、お嬢様として接しておりましたが、あるとき店の前に水を撒いている私の前に、いきなり若様が飛び出して、若様に水をぶっかけてしまいました。ただでさえ『お嬢様』はお身体が弱いとお聞きしておりましたので、慌ててお着物を脱がせて身体を拭こうとしたのですがね。まぁそれで知ったのです」
そしてその時に、旦那と奥方が駆けつけ、魔除けの意味合いで男児に女児の格好をさせていると聞いたのだ。
すでに三つなので、もういいかとも思うのだが、あまりに似合うのでそのままなのだ、と旦那は笑っていたという。
もうちょっと大きくなれば、自然と変わっていくだろう、と思っていたらしい。
「多分本来ですと、そうだったでしょう。ですが事件が起こったのです。そのとき奥方様は懐妊されておりまして、次の年明けにご出産なさいました。女の子でしたね。跡取りは産んでいるわけですし、奥方様は心置きなくお嬢様を可愛がりました。その子が、亡くなってしまったのです」


