「とにかく俺たちに直接降りかかってる問題は、政吉たちに噂の術者のことを、どう説明するかだ。その上で、どう二人と別れるか……」

 貫七的には、お嬢さんと離れられるのはありがたいのだ。
 女になれないとなれば、どう足掻いたって貫七と一緒にはなれないのだから、諦めもつくだろう。
 もっとも端から貫七にはその気もなかったのだが。

 だから貫七は、もっぱら政吉のことを気にしているのだ。
 何とか解決策を授けないと、店にも戻れないだろう。

 お嬢さんのことも放っておけないだろうし、何となく一人で苦労を背負い込む気がする。
 それはあまりに気の毒だ。

「術者なんかはいなかった、と言っても、問題は解決しねぇ。術者どうこうって問題よりも、もっと根本の、政吉の店のお家騒動を解決してやらにゃ別れられねぇな」

『そうだね……。政吉は可哀想だしね』

 ここしばらく行動を共にしたお蔭で、見えてきたことがある。
 政吉はそれこそ、小さい頃からずっとお嬢さんに仕えてきたのだろう。
 二人を見ていればわかるのだが、政吉はお嬢さんを前にすると、畏縮するというか、蛇に睨まれた蛙のようなのだ。

 そしてお嬢さんはそんな政吉を、当たり前のように顎でこき使う。
 小さい頃からの関係が、骨の髄まで染みついているのだ。

 お嬢さんがもっと素直ないい子であれば、また違うのだろうが、どうしても我が儘なお嬢さんに振り回される政吉を見ていると、政吉のほうへ肩入れしてしまう。
 おりんも同様のようで、こくりと頷いた。

 しかし解決するといっても、どうすればいいのか。
 そこに行きつくと、手詰まり感が半端ない。
 うむむむ、と貫七とおりんは黙り込んでしまった。

「何とも言えんな。とりあえず、そろそろ帰らにゃならんじゃろ。帰ってからゆっくり話し合えば、何か策が浮かぶかもじゃ」

 小薄はそう言って、薄く笑った。