「まぁ皆そんなもんよ。さすがに産まれてしまったものを変えてくれってのは、今回が初めてさ」

 産まれてしまっても、持って産まれた性を受け入れられるよう手を貸すことは出来るけど、と呟き、木の葉は記憶を探るように宙を見た。
 とにかく木の葉がやってきたことは、あるがままを受け入れられるようにすることのようだ。

「何か違うな。腹の子が男だ、ということは、絶対のように言ってるようだし。もしかして木の葉様は、腹の中を見たり出来るのかい?」

 腹の子を見られるのであれば、すでにどちらがいるのかわかる。
 希望通りであれば、術をかける真似事でもすればいい。
 何もしなくても、どうせ望んだ性別の赤子が産まれるのだから。

 だが、木の葉は軽く首を振った。

「見えるわけないだろ、そんなもん」

 あっさりと否定する。
 だとすると、あの女の自信は何なのか。
 悩んでいると、ようやく木の葉が思い出したように、ぽん、と手を打った。

「そういやぁ、み月ほど前に、やたらと必死な女が来たよ。見た瞬間、ヤバそうな奴だと思ったけど。願いは他の女子と同じことだったけどね、透けて見える心の内は、真っ黒だった。欲望の塊ってか、そうそう、確かどっかの商家の囲い者だった」

「囲い者とかまでわかるのか」

「だって男子さえ産めば、自分の子がお店を継げる、旦那様の心もこちらに向くとか言ってたし。そうすれば今の侘しい妾宅なんかでなくて、本家に移れるとか言ってたもの。やたらと旦那様のため、店のため、とか連呼してたけど、顔見りゃわかるっての」