小薄と木の葉の間で、くだらない口喧嘩が始まる。
 このままだと延々続きそうなので、貫七がさりげなく割って入った。

「まぁまぁ。俺たちのような下々の者からすると、お二人とも同じくらい尊いお方なんでさぁ。細かいことは抜きにしましょうや」

 根が単純なのか、小薄も木の葉も、あっさりと引き下がった。
 場が静まったところで、やっと木の葉が本来の話題を思い出す。

「で、えーと。ああ、その元凶の女が、おいらのところに来たって?」

『そう。元々木の葉様の情報を持ってたのも、その女なんだよ』

 へら、と木の葉が笑う。
 元々気に入っているおりんに『様』付けで呼ばれることが嬉しいらしい。

「木の葉。お前はそのようなことを企む邪(よこしま)な心を改心させるのが仕事ではなかったか? 自然に宿った命を己の都合で弄りまわすなど、外法だぞ」

「わ、わかってますよぅ。ちゃあんとおいらは、そんなふざけた考えを改めさせるために、わざわざ店を出してるんですから」

 じろりと小薄に睨まれ、木の葉は慌てて申し開きをする。
 が、貫七もおりんも首を傾げた。

 政吉の話を聞く限り、女が改心したとは思えないのだ。
 それに何より。

「女はまだ、子を産んだわけじゃねぇ。どっちかわからねぇから、男であるよう木の葉様にお願いしたって言ってたぜ」