「さて、どうするか……」

 う~む、と小薄も考え込み、堂内に沈黙が落ちる。
 しばし皆考えを巡らせていたが、不意におりんが、そういえば、と沈黙を破った。

『あの、お店を乗っ取ろうとしてる妾のほう。あの女、ここに来たんだよね?』

「え? まさか。こんなところ、そんな奴が来られるかよ」

『いや、ここっていうか、えっと、元の、滝のところかな。だって術者にお願いしたって言ってるんでしょ? 腹の子を男にしてくれって頼んだらしいじゃん。てことは、木の葉様に会ってるんじゃないの?』

 言われて貫七も、はっとした。
 確かに女は、場所も知ってるようだった。

 実際に術をかけて貰った風に言っていたようだし、ということは木の葉に会っているはずだ。
 女の言う術者とは、木の葉のことだったのだし。

 皆の視線が木の葉に集まる。
 その木の葉は、照れたように頭を掻いた。

「お、おいらに『様』って。照れるなぁ~」

 おりんも自分で言って、何となく違和感を感じたが、木の葉だって、れっきとした白狐なのだ。
 白狐は神の使い。
 ただの人間よりは、遥かに偉いだろう。
 全くそんな感じはないが。

「わしと同列ということか? 生意気な」

「しょうがないじゃないですかぁ。敬称なんて、そんな種類ないですもん」

「だったらお前が遠慮しろ。これ、木の葉に敬称はいらんぞ」

「ええ~? 折角ちょっと嬉しかったのに~」