「は。全く人ってのぁ勝手だねぇ。与えられた生を文句言わずに、真っ当に生きろってんだ」

「まぁ……あいつもいろいろあって、ちょいと可哀想な奴なんだ。稀に生まれた性が間違ってたって奴もいるみてぇだし。そのクチかな」

 言いつつ、貫七は元の堂の真ん中に座った。
 何となくおりんのことは何とかなりそうだ。
 貫七としては、このまま行者からの連絡を待って、とっとと故郷に帰ってもいいのだが、黙っていなくなるのも後味が悪い。

 しかし政吉たちに、何と言えばいいのか。
 彼らは純粋に、お嬢さんのための術者探しの旅なのだ。
 貫七も、単なる協力者。

 貫七は術者が見つかったら、まずお嬢さんを実験台に腕のほどを見極めようと思っていたので、自分たちの問題が先に解決することなど考えていなかった。
 そもそも貫七たちの問題のほうが、遥かに厄介そうだったからだ。
 言ってしまえばお嬢さんたちのほうは解決出来ても、自分たちのほうは解決出来ない、という事態になる可能性のほうが高いと思っていたぐらいだ。

「あ~~、どーすっかなぁ~~」

 面倒くせぇ、と頭を掻く貫七を見ていた木の葉が、怪訝な表情で口を開いた。

「あのさぁ。あんたら、言ってることがおかしいんだけど。『お嬢さん』を『女にする』ってどういうこと? 遊郭の水揚げ的なものじゃないよね? 意味がわからないんだけど」

「水揚げだったら、俺が喜んでやってやるさ」

 さらっと言った貫七の膝を、おりんががり、と引っ掻いた。