おりんがそろそろと小薄に近付くと、小薄は普通の猫にするように、手を差し出した。
 本当の猫であれば、このまま顎を撫でられ、ごろごろと鳴く雰囲気だが、おりんは普通の猫ではないし、小薄だって普通の青年ではない。

 指先が触れるぎりぎりで、おりんはぴたりと止まった。
 そして、小薄を見上げる。

 すると小薄は、今度はぽんぽんと、己の膝を叩いた。
 ここに来い、という意味のようだ。
 いいのだろうか、と疑い、おりんはちらりと貫七を振り返る。

「大丈夫だよ。小薄様は、そんな変なことする人じゃねぇよ」

 貫七の言う『変なこと』とはどういうことか。
 貫七が言うと、妙な意味にも取れる。
 うーむ、と顔を前に戻し、おりんは再びそろそろと上座に近付いた。

 おりんが一段高くなっている小薄のすぐ前にちょこんと座ると、小薄は不意に手を伸ばした。
 ひょい、とおりんを抱き上げる。

 抱き上げるといっても、普通の猫を持ち上げるように、前足の下に手を突っ込んで持ち上げる形だ。
 びろーんと、おりんの身体が伸びる。

「ん~? ふ~む、そうか。器の猫も、雄だった、と」

『ちょーーっ! どこ見てんだよぅっ』

「いや、悪い悪い」

 軽く謝りながら、小薄はすぐにおりんを下ろした。