『駄目だって。おいらの身代わりになるぐらいなら、おいら、このままでいいって』

「何言ってやんでぃ。このままだとお前、あと数年もないぜ。お前のためなら、俺ぁ何だってやってやる」

『貫七~~』

 周りの状況も忘れ、おりんは、うわぁんと貫七に抱き付く。
 といっても猫なので、貫七の胸に、べたっと張り付いただけだが。

「ほほほ。何とも泣かせるではないか。お前さん、ほんにその猫のこと、大事にしておるようじゃのぅ」

 小薄が、相変わらず面白そうに目を細めて貫七を見た。
 閉じた扇で狐火を毬のように、ぽんぽんと弄ぶ。

「初めここに来たときも、まずその猫を探したしの。それだけで、いかにその猫がお前さんにとって大事なものかが、よぅわかったわ」

「当然です。こいつは猫なんかじゃねぇ。ずっと一緒に育った、れっきとした人間だ。たった一人の、大事な弟なんだよ」

 おりんのこととなると、俄然強くなる。
 小薄に向かって背筋を伸ばし、貫七はきっぱりと言い切った。

「弟?」

 きょとん、と小薄が貫七を見る。
 そして、ちらりとその目をおりんに向けた。
 おりんは曖昧に、視線を泳がせている。

「ん~……? う~ん……」

 どうしたもんか、と小薄が小首を傾げながら考える。
 その間ちらちらとおりんの様子を窺い、やがて、ちょい、とおりんに手招きした。