「つまり、天狗は綺麗な自然の流れを使うってことか……」

「そんなところかの。だからまぁ、お前さんが太郎坊を、ただの人だと思っても仕方ない。あ、言っておくが、元気な魂の移動など、普通は出来んもんなんよ。そこな白狐たちにも無理であろ。黒狐や金狐・銀狐にも無理であろうな。いや、金・銀は引っ張り出すことは可能かもしれぬが、入れるのは難しかろ」

 ぶつぶつと言う小薄の説明の中に、何となくだがこの小薄という狐の偉大さが垣間見える。
 白狐と小薄の間には、まだまだ狐の階級が存在するらしい。
 ちらほらと出る軽い物言いに、全然そんな風には見えないのだが。

「魂ってのは、言ってみればその者の気の塊なわけ。だからこそ、太郎坊にも扱えたわけで。まぁ死にかけだったら放っておいてもそのうち魂は身体から抜けるけど、抜けた瞬間霧散するんよね。それが『死』ってこと」

 ほおぉ~、と感心しつつ、魂の講義を受けていた貫七に、小薄は面白そうな顔をした。

「で、だからその魂を霧散する前に他に移せたのは、やっぱり他でもない太郎坊だからであって。……うーん、木の葉はそっちの猫を気に入っておったけど、わしはお前さんのほうが気に入ったなぁ。なかなか素直でよろしい」

「ありがとうございます。こんな奴で良ければ、報酬としていくらでも差し上げますとも」

 ぺこりと貫七が頭を下げる。
 おりんが、はっとしたように貫七の膝に駆けあがる。
 そして、ぎゅっと着物に爪を立てた。