「さほどでもない……とは言わんかな。そもそも天狗と妖狐では、力の及ぶ範囲が違うというか。うーん、何と説明したらいいのかよくわからんが、天狗の扱う力は、自然の気を利用する、というのかの。人でも出来そう、というか。うーん、例えば、ほれ」

 うーんうーんと唸りながら説明していた小薄が、言いながら手に持っていた扇を軽く回した。
 ぽ、と扇の先に、小さな火の玉が灯る。
 それを、不意に貫七に向かって、ぽい、と投げた。

「うわっ! あちっ! ……て、え?」

 驚いて仰け反り、思わず手で火の玉を叩き落とした貫七が、不思議そうな顔で手を見る。
 火の玉は一度床に、てん、と跳ねると、ふっと掻き消えた。

「……熱かったか?」

 薄ら笑いを浮かべた小薄の言葉に、貫七は相変わらず己の手を見ながら、ふるふると首を振った。

「今のは狐火。言葉は聞いたことぐらいあるじゃろ。今お前が身を持って知ったように、狐火は熱くはない。そのようなものを作り出すことなど、天狗には出来ん」

 言いつつ、小薄は扇を振って、ぽ、ぽ、と周りに狐火を灯して見せた。

「こういった、いかにも人外なことは出来んというか。その代わり、自然を扱うのは得意じゃ。風や雨といったものよな。気も、そのうちに入る。ただ自然が発する気は自在に操れても、動物の発する気は、そうはいかん。汚れておるからの」