呆気にとられる貫七とおりんをしばし見つめ、青年は、ぱし、と扇を下ろした。
 そして、つい、と控えている白狐の一匹に顔を向ける。

「木の葉よ。お前が言う通り、なるほど、なかなかに面白い御仁じゃ」

 は、と一匹の白狐が平伏した。
 どうやら木の葉と呼ばれたこの狐が、先の少年のようだ。

「さて」

 再び扇を揺らしながら、青年が貫七に目を向ける。

「名乗りが遅れたな。わしは小薄(おすき)。この稲荷の狐を統べる天狐じゃ」

 ぽかーんと相変わらず阿呆面を曝す一人と一匹に、木の葉がこそっと耳打ちした。

「天狐ってのは、妖狐の最高位だよ。もっとも年齢的には空狐のほうが上だけど、力はダントツで天狐の小薄様のほうが上なんだ」

「はぁ……そう」

 そう言われても、いまいちぴんと来ない。
 とりあえずこの『小薄様』は凄い人(狐)だ、ということはわかった。

「あの。先程、天狗は人に近い、と仰いましたね。てことは、力もさほどではない、てことですかい」

 行者が天狗なのであれば、人である貫七には及びもつかない力がある、と思っていたが、魂の移動は死にかけの者からしか出来ないようだった。

「いや、俺からすると、魂の移動だけでも、さすがは師匠、と思ったものですが」

 素朴な疑問をぶつける貫七に、小薄は、うーん、と首を捻った。