気が付くと、目の前は板張りの床だ。
 は、と飛び起き、貫七はおりんを探した。

「おりんっ! おりん!」

 見ると己のすぐ傍で、おりんが伸びている。
 がばっと抱き上げ、胸に耳を当てる。
 鼓動が聞こえ、ほ、と息を付き、貫七はおりんの身体をざっと見た。

「おりん、怪我ねぇか」

『うう……。う、うん……』

 ひとしきりおりんの無事を確認した後、やっと貫七は己の周りに目をやった。
 そして、ぎょっとする。

 どこぞのお堂の中のようで、だだっ広い板張りの空間に、二人は投げ出されていた。
 そして、周りをぐるりと、白狐が取り巻いているのだ。
 遠巻きだが、いくつもの光る目に囲まれているのは、この上なく不気味だ。

「な、何だ……ここは……」

 呟き、貫七はぐるりと辺りを見回した。
 と、正面だけ、ぽかりと白狐の輪が開いている。
 そしてそこには、天井から御簾が垂らされていた。

 貫七の目がそこに留まるのを待っていたかのように、御簾がするすると引き上げられる。
 周りの白狐たちが、一斉に平伏した。

「そなたが此度、面白げな案件を持ってきた主か」

 御簾内にいた青年が、静かに口を開いた。
 ちょっときついが、端正な顔立ちの青年だ。
 ゆったりと脇息に寄りかかり、手にした扇を弄んでいる。