にやにやと言う少年に、貫七は唖然としたが、しばらくしてから、がっくりと項垂れた。
 術的なものではなく、ただ気持ちを変えただけか。

 それとて大したことではあるし、そのほうが健全ではある。
 だがおりんの場合は、そんな生易しいことでは解決出来ないのだ。

「当たり前だろ。人の勝手で無理から自然の流れを変えるなど、許されることではあるまいよ」

「それはそうだろうが……」

 強い期待を持っていただけに、貫七の落胆は大きい。
 膝に手を付き、肩を落とした。

「こうなったら、もう最後の手段だ。おりんを連れて、師匠の元へ帰ろう」

 呟き、のろのろと顔を上げると、貫七は肩の上のおりんを撫でた。

「これからは、師匠のところで暮らそうぜ。そんで、いよいよ猫の寿命ってときになったら、その時また魂を入れ替えて貰おう」

 一刻も早くおりんを戻したかったため、十年間術者を探してきたが、猫の寿命が近づいてきたら、もう猶予はない。
 まだ猫が元気なうちに、行者の元に戻ったほうがいい。
 そうすれば、今度は逆の方法で、猫から抜けそうになっている魂を、元の身体に戻せばいいのだから。

「もっと早くに戻す予定だったがな……。これなら端から、師匠の元で静かに暮らしてても良かったな」

『そんな隠居生活、貫七にゃ似合わねぇよ』

 おりんが、沈む貫七を慰めるように言う。
 あまりの貫七の落ち込みように、少年がいることをすっかり忘れているおりんなのであった。