「それは……。旦那様のお言いつけもありますし。荷物持ちも必要でしょう?」

「それだけだったら、宿の部屋は別にするのが普通だろ」

 見た目男と女なのだから、宿に泊まる際は、緊急時でもない限り、宿のほうで別々にする。
 お紺の茶屋ではほぼ緊急時だったため、一つの部屋しか用意できなかったが、そのときもそれが当たり前のような雰囲気だったのだ。
 おそらくあそこまでも、ずっと二人一部屋で来たのだろう。

「お嬢さん、あんたのことは、さほど嫌ってもいないようだな」

「……まぁ、一番近くにいた、とは言えるかもしれませんね」

 慎重に、政吉が言う。
 貫七は、じっと彼を観察した。

「あんたは? お嬢さんのことを、どう思ってるんだ」

「え?」

「初めにお嬢さんのことを聞いたときは、あんまり良く思ってないのかもなってぇ印象も受けたが。でも何か、憎たらしくは思ってても、憎み切れないような、複雑な思いがあんのかな、とも思うんだよな。何せ、あいつぁ男じゃねぇか。それならいっそのこと、我が儘で憎たらしい、と思い込んでおいたほうが、深みに嵌らないでいいだろう?」

「わ、私が若様を、お慕いしていると?」

「違うのかい?」

 政吉は僅かに首を振っているが、明らかに狼狽えている。