『どうしたのさ? そりゃお前に衆道の気(け)はないのはわかってるけど、あいつはうっかり男だってこと忘れそうなぐらい女じゃん。女好きなお前が避けるなんざ珍しいじゃないか』

「馬鹿言え。あいつが男だってこと、忘れることなんかあるかい。女好きだからこそ、そこは忘れねぇ。忘れてねぇからまた、複雑なんだよ」

 おりんは小首を傾げて、貫七を見た。
 貫七はこの浮世離れした美貌のせいで、女はもちろん、男にまで言い寄られることが少なくない。

 貫七本人に衆道の気がなくても、また相手の男にもその気がなくても、性別を超えた美というのだろうか。
 そういったもので、老若男女問わず虜にする。

 だから、お嬢さんが男でも、想いを寄せられることには慣れているはずだ。

『もしかして貫七。女の姿だから、勝手が違うのかい?』

 確かにそのような者は初めてだ。
 男相手の陰間だって、姿は男である。

 が、貫七は軽く首を振った。

「いや、多分違う。何つーか、お嬢さんの本気度が怖いんだよ」

 あ、なるほど、と、おりんは頷いた。
 今まで女だろうが男だろうが、ここまで本気で貫七にハマった者はいないのだ。