「そうだなぁ。考えてもいいかな」

 ぼそ、と言った貫七に、え、と女たちが反応した。

「え、何々、兄さん、ここの養子になるの?」

「ええ、女将、いつの間に?」

「もしかして、女将、兄さんに手付けた?」

 一斉に貫七を取り囲み、口々に言う。

「ちょいと! 失礼なこと言うんじゃないよ。あたしゃ別に、兄さんをどうこうなんてしてないよ!」

 女将が赤くなって否定する。
 女将はすでにいい歳だし、そう焦ることもないと思うのだが。

 が、そこは誑しの貫七。
 女将に変な恥をかかすことなく、上手く場をまとめる。

「女将さんみてぇなやり手の女子さんにゃ、俺なんぞ青二才だろうし、相手にもされねぇわな。養子ってのも不自然だろ。まだまだ女将さんも若ぇんだし」

 にこりと爽やかに笑う。
 皆、ぼぅっと貫七に見惚れて、話の中心は女将から貫七へ移る。

「ね、ねぇ兄さん。何だったらほんとに、ここで働いちまったらどうだい?」

「そうだよ。ここは都からも近いし、でも人も多くない。住みやすいよ?」

 きゃいきゃいと貫七を取り巻いて言う女たちに、おりんは冷めた目を向けた。
 全く女ってのは、一旦お喋りをし出すと止まらない。
 夕餉の支度の手なぞ、完全に止まっている。

「にゃうぅ~ん」

 おりんが小さくひと声鳴くと、女将が、は、と顔を上げた。

「あ、いけない。お腹空いたんだね。ささ、お前たちも、手を止めるんじゃないよ」

 本来の仕事を思い出し、女将が場を仕切りだす。
 そしてどんぶりに盛った猫まんまを、おりんの前に置いた。

「よしよし。お前は偉いねぇ」

 厨に入っても、おりんは大人しく隅っこから動かない。
 他の猫のように、気ままに動き回るということがないので、邪魔にもならない。
 おりんはごろごろと女将の膝頭に頬を擦り付けると、猫まんまに顔を突っ込んだ。