「それは……そうだけど」

 なおも不満そうな娘に、貫七は、ふぅ、とため息をついた。

「どうしてもってんなら、やっぱり俺が探してこようか?」

 途端に娘が、ふるふると首を振った。
 これ以上我が儘を言えば、この色男の不興を買うと思ったようだ。
 そのように貫七が持って行ったのだが。

「ううん、いいよ。そうだよね。折角兄さんが心配してくれてるのに、ここで意地張っちゃお腹の子のためにもならないよね。怪しげな術者に診て貰うより、ちゃんと本殿でお参りしたほうがいいだろうね」

 噂の術者を求めてこの伏見まで旅してきたのだろうに、今や術者を見つけることよりも、貫七に嫌われないようにすることのほうが重要らしい。
 色男効果、恐るべしである。

---実験台がいねぇのは痛いが、とりあえず場所は何となく特定出来た。明日にでも、確かめに行こう---

 そう思い、貫七はちらりと大男を見た。
 逞しい腕にがっちり抱かれ、おりんはぐったりしている。

「よぅ兄さん。あんたが一番力あるだろ。下山は危ねぇから、お嬢さんを頼むぜ」

 ぽん、と大男の肩を叩き、貫七は、ひょい、とおりんを奪った。

「え、あ、あたしゃ大丈夫だけど」

 娘が慌てたように言う。
 歩いていたほうが、貫七に構って貰えるのだ。

 確かに下山は登りよりも危ないから、来るときよりもべったり引っ付くことが出来る。
 が、貫七は、ちちち、と指を振った。

「駄目駄目。俺がこの兄さんぐらい力があったら抱いて降りてやれるが、生憎さほど力はないんでね。ささ、兄さん。お嬢さんを負ぶってあげなよ」

 そう言って、さっさと離れてしまう。

「うむ、その通りじゃ。さ、嬢様。足でも滑らせたら一大事です」

 老僕にも促され、渋々ながら娘は大男の背に乗った。