「え? お兄さんも、何かお困りなことが?」

 言いながら、娘は訝しそうな顔をした。
 貫七が、妻帯者には見えないのだろう。

「んにゃあ、俺は関係ねぇよ。でも何か、よく聞くんだ。伏見にゃ、腹の中の子の性別を変えることの出来る術者がいるとか。各方面から、跡取り問題のある奥方とかが、こぞってやってくるらしいじゃねぇか」

「へー。じゃあ噂は本当なんだねぇ」

 安心したように言う娘に、貫七の目が光る。
 やはりこの娘、単なる噂というだけでない自信があって、やってきたのだ。

「へぇ? やっぱりお嬢さんも、噂を頼りに来たのかい? でも単なる噂じゃねぇの?」

 端から信じていない風に言ってみると、娘はふるふると首を振った。

「それがね、そうでもないみたいなんですよ」

 真剣な表情になって、娘は声を落とす。
 そして、ちらりと辺りを見回すと、内緒話をするように、少し身を乗り出した。

「あのね、実際に知り合いが、診て貰ったんですよ」

「な、何だって?」

 思わず叫び、貫七は、がしっと娘の肩を掴んだ。

「あんた、その術者を知っているのか!」

 勢い込んで言う貫七に、娘は目をぱちくりさせる。
 が、途端に顔を真っ赤にして俯いた。

 思わぬ強力な手蔓に浮かれて、つい迫ってしまった。
 気付けば貫七は、ぐいっと娘に顔を近付けていた。